2025年07月28日

2016年度 第113回月例研究会

第113回月例研究会

日時:2016年6月18日(土) 14:00~17:00
場所:渋谷区笹塚区民会館2階会議室1号
【会場案内】
渋谷区笹塚区民会館
〒151-0073 東京都渋谷区笹塚 3-1-9
・区民会館は催し物に関する質問にはお答えできませんので、会場への電話問い合わせはご遠慮ください。
・会場は駐車場がありませんので、自動車での来場はご遠慮ください。
案内図:https://www.city.shibuya.tokyo.jp/est/kmkaikan/km_sasazuka.html

タイトル:負の体系、その解放
     ─ 削除論と新9条論を受けて ─
      

報告概要:
 昨年、安倍政権は、憲法学者の圧倒的多数が違憲とする安全保障関連法制を国会で強行成立させたが、その一方で、国会審議と並行した「戦争法」反対の市民運動は、60年安保闘争以来と言われる多数の市民、それも老若男女・職業階層を問わない非組織の市民が国会周辺を取り囲み、「戦争法反対!立憲主義回復!9条壊すな!安倍政権退陣」の声を上げ、安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める運動は今も続いている。
 しかしながら、「9条を守れ」というスローガンは、実際には何を意味しているのだろうか。よく知られているように、いわゆる「護憲派」の中には、自衛隊・安保は違憲だと考えるグループと、専守防衛の自衛隊と日米安保を容認するグループとが併存している(以下、前者を「原理主義的護憲派」、後者を「修正主義的護憲
派」と呼ぶことにする)。もちろんこれは、安倍政権の「解釈改憲(2014年7月1日の閣議決定)→立法改憲(2015年9月19日成立、16年3月29日施行の安保法制)
→参院選後に安倍政権が目指す明文改憲」という3段階の壊憲策動に反対するため、「小異を捨てて大同につく」という政治的考慮に基づくものである。しかし、自衛隊・安保を容認(合憲判断)するか、違憲とみなすかというのは、果たして「小異」と言えるだろうか。ジャーナリストの今井一は、原理主義的護憲派と修正主義的護憲派とが互いの批判を控え、「条文の護持」という一点で協調してきたことが、解釈改憲を黙認し、立憲主義を損なってきたと護憲派を批判し、解釈改憲に歯止めをかけ、立憲主義を守るためには、専守防衛を認め、軍事同盟に縛りをかける明文改憲が今こそ必要だと訴えている。このような、立憲主義を守る(回復させる)ためにこそ、自衛隊や安保を憲法で位置づけ縛りをかける明文改憲が必要だとする立場――かつては護憲的改憲論と呼ばれ、最近は新9条論と呼ばれる立場――を主張する論者が近年急速に増えている。
 一方で、安全保障の基本戦略は憲法に書き込むべき事項ではなく、通常の民主的な立法過程で絶えず討議され、批判的に再検討され続けるべきだとの立場から、9条削除論を唱える主張も登場した。この立場は、9条削除と同時に、もし戦力を持つ場合には、無責任な好戦感情抑止のために徴兵制を導入すること、良心的兵役拒
否権を認めること、文民統制・議会統制といった戦力統制規範を憲法に書き込むことを主張している。この主唱者である井上達夫によれば、護憲派は、憲法を尊重するふりをしつつ、9条を裏切る自衛隊と日米安保の存在には目をつぶるか容認しさえし、自らその便益に便乗している点で、自民党改憲派よりも大きな政治的欺瞞、憲法論的欺瞞の罪を犯していると、厳しく断罪される。
 本報告では、第一に、このような政治的には護憲派と近い立場にあると思われる人々による護憲派批判をどう受け止めるのか、その妥当性について検討する。第二に、護憲派、とりわけ原理主義的護憲派が歴史的に退潮してきた主原因が、理論闘争においては、消極的で受け身の“専守防衛”をもっぱらとし、“大同団結”の美
名の下に、自らの主張を積極的に打ち出さず、修正主義的護憲派の主張に妥協してきたところにあるとの認識に基づき、9条本来の意義を再確認し、その再生の可能性を検討する。

報告者:稲田恭明(社会理論学会会員)

会場費:なし

13:30より2016年度総会が開かれます。理事の方は13:00にお集まりください。
  13:00~13:30 会場設営
  13:30~13:50 総会
  13:50~14:00 休憩
  14:00~17:00 第113回月例研究会