2025年07月28日

2018年度 第120回月例研究会

第120回月例研究会

日時:2018年11月3日(土) 14:00~17:00
場所:渋谷区笹塚区民会館4階和室
【会場案内】
渋谷区笹塚区民会館
〒151-0073 東京都渋谷区笹塚 3-1-9
・区民会館は催し物に関する質問にはお答えできませんので、会場への電話問い合わせはご遠慮ください。
・会場は駐車場がありませんので、自動車での来場はご遠慮ください。
案内図:https://www.city.shibuya.tokyo.jp/shisetsu/chiiki/kumin_kaikan/km_sasazuka.html


タイトル:現代社会学におけるルーマン理論の哲学的意義(仮)
報告概要:
 本発表ではルーマンが彼の理論をどのような立場から構築へと向かったのか、そして、どのように構築していたのかをできる限り彼の言説に寄り添いながら明らかにし、そのことを通して、現代社会学における理論的陥穽への一つの道筋を示したいと思う。
 そもそもルーマンはどのような立場から自らの理論を構築したのか。その点を、初期に行われたハーバーマスとの歴史学をめぐる論争から後期におけるフーコーの方法論に対する言及などを参考に明らかにしたいと考えている。そこで示されるルーマンの立場は、現実分析にはその前提となる理論的枠組みが必ず必要であり、またその理論は常に時代拘束的であるという立場である。こうした立場がいかに正当化されるのか、超越論的哲学と分析哲学の間で行われた論争などとの比較を通して明らかにし、ルーマンの立場の哲学的な独自性を明
確にしたい。
 時代拘束的な理論といったとき重要なのは、前の時代との違いを明らかにすることで自らの独自性を示そうとする近代的な考え方や、自ら生きている時代を批判する形で示されるポストモダンな思想とは異なり、いかにして自らが生きる近代社会の‘中で’近代社会を対象化できるか、というルーマンの考えである。このような立場から、認識論と存在論のこれまでの対立を架橋するラディカル構成主義という考えにもつながっていく。この立場の独自性を、構築主義論争などの文脈から明らかにする。
 ただこうした考えから、ルーマンは、これまでの科学論や哲学言説を全否定しようとしたわけではない。彼はカントの『純粋理性批判』における「科学はいかにして可能か」という問いを重要視していたし、近代社会に生きながら近代的思考を超えようとしていたハイデガーの議論にも注目していた。
 ただルーマンが行おうとしたのは、それらの言説と出発点をともにしながら、これまで科学を正当化してきた科学論を批判し、現代の、当時最新の論理学や科学論の知識をもとに体系的な理論を構築しなおすことで、科学を改めて正当化しようとしていたということだ。
 そしてそこで形成されたのがシステム理論であったということである。そのような哲学的背景から示されるシステム理論は、一部の制度論者が提示している哲学的議論なしにマクロ的な社会概念を‘虚構’と規定するような理論とは一線を画しているし、またルーマン自身が否定するような科学システムを科学
者同士のコミュニケーションに還元しようとする理論とも異なる。
 もちろん最新の論理学や科学論の知識に多く言及しているからと言って、何でもかんでも取り入れたわけではなかった。彼は自らの理論を体系化するにあたり、フッサールの示した現象学的方法論を基本としていた。そして、‘その方法をもとに’新しい論理学や科学論の知見を体系的にまとめ上げたのである。
 ただ注意してもらいたいのは、フッサールの論理とルーマンの論理の類似点を数え上げることで、単にフッサールの『イデーン』における自我論の論理をそのまま社会へとあてはめたということを示したいのではないということだ。そもそも自我論という点から見れば、ルーマンは『イデーン』における自我論ではなく、フッサール自身が明確に否定した『論理学研究』の自我論を支持している。
 ここで検討したいのは、フッサールの方法論を採用し改めて科学を正当化しようとする中で、必然的にそのような論理が社会理論へと発展していく論理の展開過程の妥当性であり、それにより既存の現象学的な言説とどのような違いが生まれたのかということである。たとえばルーマンは現象学的方法を採用するとは言っても、相互主観性や生活世界といった概念を明確に否定している。こうした点を検討することで、現象学的な方法を基に形成された科学理論であることから、生活世界概念や社会的紐帯の存在によりルーマン理論を批判、修正しようとする既存の研究や、フッサール晩年の現象学的態度を倫理的に捉える研究に対する反論を示すことになろう。こうした反論から、既存の、第二階の観察を研究者の倫理として呈示しようとする研究への反論へもつなげる予定である。
 ちなみにこれまでのルーマンのシステム概念への批判は、近代社会における法や政治、経済といった領域の権力性から行われることが多かったが、それらの批判で前提にされている近代社会の分析は、ルーマンが行ったものとは異なる。こうした点の検討も含めて、既存研究の再検討を行い、ルーマン理論への
批判に反論する予定である。
 これらの作業を通して、これまであまり明確になっていなかったルーマン理論の独自性を示すとともに、現代社会学における哲学的意義を示したいと考えている。

報告者:福永晋一朗(早稲田大学大学院)
会場費:なし
理事の方は会場設営のために13:00に会場に集合してください。
(参加者は事前に昼食を済ませておいてください。)