2009の活動について

■ UBSへの「障害」に対する啓発研修の提供について

報告 小野孝枝

フットルースとUBSという企業との出会いは2008年の障害者国際交換プログラムでした。障害を持つ人の「就労」をテーマにしたシンポジウムを開いた時に、UBSで企業内の多様性(女性・障害者等を含む「多様」な状態)を推進している部署の女性が参加してくれました。その女性(以下Sさん)との交流の中でたどり着いたのが、海外との交流プログラム以外の、日本国内でのフットルースの特性を生かした、この活動です。
UBSへの研修の提供は今回で2回目です。一方的な提供ではなくUBSからフイードバックを貰うという形のいわば共同事業的な性格もあります。2回ともパイロット版の提供という体裁をとっています。

о提供したプログラムは、障害全般についての入門的なものです。
 企業では障害者雇用について、残念ながらまだまだ障害者雇用促進法で定められた雇用率を満たさなければならないからという消極的な考えで受け止めているところが多く、なかなか戦力要員とは見ていません。それに対して、そうではなく、障害のない人も能力が様々であるように、障害のある人も様々でしかないということ。発揮できる能力を十分に持っている人も大勢いるということを示したいと思いました。
何よりも「知らないこと」から壁が生じているので「知らないこと」に気づいてもらい、好奇心をくすぐりたい(知ろうとしてもらいたい)と思いました。

о参加したメンバーは、車椅子使用者2人、視覚障害を持つ人1人、聴覚障害を持つ人1人、手話通訳者2人、日英同時通訳者1人、サポーター2人です。今回は全てがフットルースのプログラムに関わってくれたメンバーです。フットルースの中にこれだけの多様なメンバーがいるということがこのプログラムにフットルースが取り組み始めたことを必然とさせるように思いました。

оプログラムは2時間で3つの内容を提供しました。
1つはレクチャーです。フットルースのメンバーが今まで障害を属性の一つとして生きてきた中で獲得したものを伝えました。この中で、障害を持つ人が「障害者」という属性しか持たない存在ではないことを伝えたいと思いました。
あとの2つ目と3つ目は参加・体験型です。2つ目は手助けの仕方。これが一番企業から求められることです。簡単に車椅子使用者、視覚障害者、聴覚障害者、知的障害者について手助けの仕方を、機器を使ったものや人の力を使う方法等をデモンストレーションし、体験もしてもらいました。もちろんいつもフットルースが言っている「何よりも、手助けの方法は障害当事者に希望を聞いて欲しい」これが伝えたかった中心です。
3つ目は「想像してみよう」というタイトルで、参加者にそれぞれ障害を割り振って、自分が障害者になったつもりで一日を想像してもらいました。朝の目覚めからの一日をこちらで用意した流れにあわせて(朗読しました)車椅子を使っていると・・・???見えないと・・・???と想像してもらいました。
感想をやり取りする中でこの内容は事前に考えた以上に効果的だと思いました。自分の「昨日」からは思いの外のことを意識的に想像することで、自分とは違う相手との距離を縮められるのではないかという今後への期待が持てました。何よりも「相手への想像力」これが鍵のような気がします。

о企業側の反応はプログラムに対して良いものでした。特に障害を持つ人自身が今までの自分の思い込みとはかけ離れた活動をしている(なにせフットルースのメンバーですから)ことにいい意味でのショックを受けてくれたようです。

Sさんという熱心な旗振り役がいて、外国人も多数就労している企業でしたが、今回、研修の最初で障害を持つ人に関してどのようなイメージを持っているかと問うと、出てきたものは残念ながらマイナスのイメージに支配された言葉でした。だからこそ、このような研修が必要なのでしょうが、フットルースとしてやる以上は安易な同情の喚起や雇用促進法の数合わせのための方便に流れないフットルースらしい、当事者自身が行うことの意味を果たす研修を提供したいと思っています。
「障害は乗り越えるものではなく生きていく条件の一つ」このフットルース代表の言葉を伝えていきたいと思います。